farthesky

空から幼なじみ降ってこないかなあ

ヱヴァQの感想なんじゃないかな

 思い出話*1。を思わず書こうとしてしまった。もちろん決してそんな話を書いてはいけない。
 Qについては沈黙を保つとか言ってたそばからこの体たらくなので、まあ過去や未来の自分から糾弾されるんだろうけど、それでもとりあえず吐き出しておかないと息苦しいので吐いておく。あ、ネタバレです。


 結局、僕はアスカのことしかみていなかった。なんかもう、眼帯アスカというだけで「そっかー、目を貫かれたEoE後のアスカかー(違う)、RE-TAKEかー(もちろん違う)」と直結されるおぞましい回路が脳内に出来上がってしまっていたので、アスカの同一性とかほとんど何も信じられていない状態だったからこそ、その辺はどうでもよくなっていた。でも、それでも敢えて言えば、たぶんアスカの話をきちんとしようとしたら、惣流ではなくて式波になる必然性があったんだろうと思う。それはLASのSSとか読み返してみても感じたりするところだけど。何のかんの言って、エヴァは結局レイの話しかしてこなかった。それは延々と自意識だの承認だの家族だのの話に終始していて、その繭から全然出ていないということで。結局アスカにしたって、EoEでアスカが覚醒する原因は彼女の母親なわけで、それまではアスカもアスカで家族とか承認とかいった問題系にトラウマという形で囚われていたと言えるでしょう。まあしかしアスカは人間なので、そこから抜け出た覚醒後(というか、サードインパクト後)には特に鮮烈な形でシンジの前に他者として現れるわけですが。一方、新劇というのは、Q観ても明らかなように自意識とか人を傷つけるのが怖いだとか成長だとかいう問題系ではない。フォースインパクトだって、人を傷つけること/人に傷つけられることに対する恐れから起こされるんじゃない。アスカの話をきちんとするためには、内省といった問題系から離れなければならない。そこでコミュニケイションの問題が前景化してくるという流れはたぶん正しいのだけど、Qに関して言えばそこんところは下手だったなとは思った。脱線し始めたのでアスカの話に戻そう。アスカにおける根本的な問題というのはたぶん、きちんとアスカの話をしようと思ったらトラウマ持ちのメンヘラとかにはできないんだけど、でもそれってアスカじゃなくね?と直感的に思ってしまうことなのではないかなと思う。完全に二律背反だけど。それでも、きとんと(シンジと)アスカが向き合うという問題自体は旧からあったはずで、そこを引き継いでやるんだと感じられた時点で、アスカはアスカというトートロジーを無条件に信じさせられてしまった。まあ僕は最後にうずくまってるシンジの前に現れて手を差し伸べて引っ張ってくのがアスカだというところでほとんど泣いてたし、ラストで三人が歩いていくシーンにもうどうしようもなくやられてしまいました。完。
 あとはまあ、たぶんこれが旧エヴァっぽいと言われる最大の原因であろうディスコミュニケイションか。旧エヴァだと、自意識が云々とかいう感じでキャラクターの性格・性質からそのディスコミュニケイションの必然性/偶然性は説明できていたのだけど(たぶん)、今回キャラクターはほとんど健全なので、そういう説明が出来ず、作中のディスコミュニケイションは物語を悲劇にするために無理矢理やってるなあと感じられてしまって違和感が残る。で、その悲劇にしたって、「ディスコミュニケイションが悲劇を生む」という悲劇の構造的特徴に忠実に作られているので、観ていてかなり線形にというかロジカルに理解できてしまう。唯一ブレが出るであろう言葉の両義性を活用しようとしているところもあったけど(ex.「あなたは何もしないで」は消極的に「あなたは必要ない」とも積極的に「あなたには何もしてほしくない」ともとれる、とか)、いかんせん映像作品というのが裏目に出てしまったのか、ほとんど意味が確定できてしまう。もちろんそんな構造しかないところには全く悲劇性とか感じられないわけで、そこのところは全体的に残念だったかな。いわば、わけが分からないのではなくて、わけが分かり過ぎるのがちょっとなー、という。
 あとはなんだ、もうサードインパクトの14年後ということで、冷静に旧エヴァとは様変わりしてしまっているのだけど、そのことが逆説的に視聴者をして旧エヴァとの類似点を探さしむるようになっているんだろうなあ、と。破では相違点が注目されていたのとは対照的。それはまあ、シンジ君もそうなのだろうけれど。シンジ君は14年経って目覚めてみたら、ミサトさんもリツコさんも、アスカもみんな別人のようになってしまっている上、自分がいる地球という場所・風景も様変わりしてしまった事実を見せつけられる。そんな彼にとって、目覚める前と後とで共通するものはもはや、「夜空に瞬く星」という最果て≒「世界」という謎の抽象観念と、自分が助けた「綾波レイ」しかない。それなのに、俗流定義的セカイ系に忠実に「きみぼく」の話をしてキミを助けてたらセカイは滅びてた上に、結局のところ助けたと思った綾波も助けられてなかったら、そりゃあ(悪)夢でもみてるような気分になるわなあ、と。シンジ君があと縋れるのは「世界」をrebildすることしかないからこそ、実際にその14年をなかったことにしなければならないという強迫的観念故にカヲル君の制止を振り切って槍を抜きにいくわけで、僕が読んだ感想に散見された「僕らのEoEが帰ってきた!」ってのはある意味でこのシンジ君と変わらない、とも言える。むろん、それを自らの変化のしなさに引きつけてしまうことは理解できなくないからつらいのだけど(余談)。しかし、世界をrebildすることは叶わないわけで、それは綾波が結局助けられていなかったということとパラレルな関係にある。一度終わった世界はrebildできないし、一度死んでしまった(と言ってしまっていいでしょう)人間はreviveしない。Qは、変化しないことあるいはやり直しは不可能だ(CAN NOT REDO)ということが明らかになる話であって、だからこそラストシーンにおける変化の希望がより映える。

 以下羅列。

  • 巨神兵。特に後半はポエミーで好きだったのだが、正直林原めぐみの声に耐えられなかった。二回目みると、ああなるほど破とQの間なんだなあという風にすんなり。あとはクレジットで「言葉 舞城王太郎」をみたときの「あー」感。
  • 序盤アスカの声の、がんばってるのはわかるけれどなんとも言えない緊迫感のなさ。もはやこれがいいんだか悪いんだかわからなくなってしまった。
  • アンチATフィールドなんかが単なる一兵器として登場するあたりにも象徴されているように、なんかもう自意識だとか承認だとかそういうお話ではないのだなあ、と改めて。ATフィールドは心の壁設定とかもはやどこ吹く風という感じ。
  • Gods Messageは好きなBGMですね。
  • まあ序盤の宇宙戦はテンションあがる。
  • 沢城みゆきはずるい。
  • どこぞのアニメから友情出演してきたかのようなオペレーターたち。いいと思います。
  • Wunderとか出てきた時の「エウレカセブンは無駄じゃなかったんや!」感とか。
  • 艦長やってるミサトさんの声が期待を裏切らない感じですごくよかった。
  • 日向の「パターン青だよ!」は笑いながらも感動してしまった。さすが「パターン青!」のプロフェッショナル。
  • 全体的にCG使ってるところが残念だったなあ、という印象。
  • 不良アスカかわいい。アスカの被ってる帽子欲しい。
  • エヴァの呪縛」「14年間」「エヴァは殲滅」→あんまりにもあんまりなので爆笑。
  • どうしても真ん中が退屈だなあ、と思わされてしまう。たぶん旧エヴァとかだとここで自意識が云々承認が云々みたいな話になって謎の自意識心象風景が延々と続くということになるんだろうけど、今回はそういう問題系から完全に離れてて心象風景とかほとんど使えず、廃墟で一緒にピアノを弾くという謎シーンに。白馬出てくるところとか反応に困る。心象風景出すなら電車を出せ電車を!
  • 星空。単に星は変わらない(人間的な時間スケールに対して極めて大きなスケールでしか変化しない)というだけではなくて、夏という極めて人間的な概念と自然とが円環的な性質を通じて対応しているということ。安心するよね。
  • みんな既に廃墟と化している「世界」とかもうどうでもいいと思ってるのに(だから特に誰も説明すらしない&どうでもいいと思っていないカヲル君がはじめて説明をするわけでしょ?)、それでも「世界を救う」とか言っちゃってアスカにガキ呼ばわりされるシンジ君。がんばれ。いやマジで。
  • おいおい第九かよ、という。ここら辺まではまだ笑えたのだが。
  • フォースインパクトを見せられると、こう、シラケるというかなんというか。どうでもいいことを敢えてやってるなあ、と強く感じられて。
  • まあアスカ登場で僕の視聴意欲は持ち直すんですがね。
  • 「姫を助けなさい」とか「私のことは助けてくれないんだ」とか、もちろん具体的な行為のことを指しているわけじゃなくて、きちんとアスカに向き合え、ということであり。いやもう感動ですよ。
  • まあそういうわけで、きちんとアスカの話をするんだなーというのでもう泣きそうだった。最後の赤い大地を三人が歩いていくシーンとか、やっぱEoEラストの「気持ち悪い」の先なのだと感じさせられてしまう。希望。それはまあ、変化しないことの象徴である星空との対比で青空が映ることとかね。アスカに引っ張られて落ちるS-Datとかね。なんかもういっそのことラストシーンを90分に延ばしたような映画をみたい。三人が90分間ひたすら赤い大地を歩いていく映画。たまにアスカが口を開く。レイはその後ろをとぼとぼついていく。
  • やっぱあの予告はあまりにもダメだと思う。
  • RE-TAKEを思い出して読み返してしまった僕をお赦しください。

 なんだこれ。まあとりあえずそんなところでした。アスカ様。感動。

*1:僕がエヴァをみたのはちょうど14歳のとき。音楽部の合宿に同級生が全巻DVDを持ってきていて、それを2日だか3日だかほとんど徹夜でみた(練習時間にうとうとして指揮者に怒られたりしたのが懐かしい)。これが僕にとってのアニメ初体験で、結局それは僕が第二外国語を独語にしたところまでついて回ってきている…(延々と続く)。